新肛門手術をすると約6ヶ月後に新しく作った肛門括約筋が動き出します。それを確認してから、ストーマをなくし、新しい肛門を使い始めます。
つまり、この手術を受けた方々は、一時的にストーマを経験し、自分で新肛門と比較できるのです。これは、新肛門手術に対する、もっとも厳格な評価といえるでしょう。
新肛門手術の臨床結果
新肛門手術を受けられた方、22人の手術後の経過を見てみましょう。
22人のうち2人が、創部の感染と会陰部に移動させた腸管の壊死に起因する術後合併症が原因で、新肛門を使わずに、永久のストーマとなってしまいました。また、他の2名は、手術後まもなく癌が再発し、その治療のため新肛門の治療を断念しました。
つまり、今日までに15人の方が、人工肛門(ストーマ)から逃れて、新肛門の生活を経験したのです。
新肛門手術後の生活
15人のうち、新肛門の生活が2年以上になる10人で、術後の生活を評価しました。
まず、満足度に関しては、8人(80%)がストーマの生活より、新肛門の生活のほうが良いと評価し、2人(20%)が、なんとも言えないと、自己評価しています。ストーマの方が良かったとか、ストーマに戻りたいという方は、1人もいませんでした。この手術の利点のひとつは、希望すればいつでもストーマに戻れることです。もちろん、再度、手術が必要になります。
満足度が高いからといって、排便状況が100点満点というわけではありません。どんなときでも完全無欠の、20歳のころのお尻を期待されると、臨床成績は見劣りがします。
しかし、時々下着を汚すかもしれない、おじいちゃんやおばあちゃんのお尻でも良いという考えでしたら、十分に勝ち目のある手術であると考えています。
完全な働きを持ったお尻に近づきたいというのは、大きな願いですが、今、現実に競っているのは、ストーマか新肛門か、どちらが良いかという点です。ストーマとの比較では、実に80%の方が新肛門に軍配をあげ、20%の方が意見を保留しているというのが新肛門の現状です。
これらの結果は、以下のアメリカの外科専門誌「サージェリー」に公表されています。
T.Sato et.al. Long-term outcomes of neo-anus with a pudendal nerve anastomosis contemporaneously reconstructed with abdominoperineal excision of the rectum. Surgery 2005; 137: 8-15)