痔と間違えやすい病気とはなんなのか

投稿日:2020年10月27日 更新日:

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痔と間違えやすい病気にもさまざまなものがある

肛門やその周辺は非常にデリケートであるため、痔以外にもさまざまな病気が起こり得ます。
中には痔と症状が似ているものもあり、誤って判断してしまうケースも少なくありません。
痔と間違い治療が遅れるようなことを防ぐためには、それぞれの病気の特徴をしっかり把握しておくことが重要です。
今回は直腸脱や毛巣瘻など、痔とよく似た病気について解説します。

肛門掻痒症

肛門掻痒症とは肛門やその周辺がかゆくなる病気です。
肛門にできた傷や拭き残しの便などが原因で発症し、かゆみ以外にも肛門のべとつきや下着の汚れなどを訴える方もいらっしゃいます。

肛門掻痒症の症状と同じ肛門のかゆみは痔だけでなく糖尿病や黄疸でも起こりますので、気になる方は一度病院へ行くと良いでしょう。

膿皮症

若年層の男性が患いやすい膿皮症はお尻や太ももが化膿する病気です。
はじめにかゆみが表れ、そして痛みと共に膿が出ます。
膿が出てくる穴が瘻管と似ているため痔瘻と間違える方が多いですが、膿皮症の穴は浅いためトンネルにはなっていません。

抗生物質では治せず、皮膚を切除する手術が必要です。
なお膿皮症がもととなり、痔瘻やがんを併発してしまうケースも発見されています。

直腸脱

排便時に強くいきみすぎると直腸が裏返り、肛門から出る直腸脱を患ってしまうこともあります。
また加齢により肛門括約筋が緩んだことで発生することもあり、とくに高齢女性はこのケースが多いです。
なお脱出した痔核との違いは、静脈叢が膨らんでいるかどうかです。

どれだけ腸が脱出するかによって完全直腸脱と不完全直腸脱に分けられます。
完全直腸脱は重度になると10cm以上飛び出ることもあります。

排便時の強いいきみは直腸脱だけでなく痔核の原因にもなるので、力を入れすぎないよう日頃から注意しましょう。

毛巣瘻

体毛が濃い男性の場合、毛巣瘻を患ってしまうこともあります。
これは肛門と尾骨の間に袋状のしこりができ、その中に毛が多数詰まってしまう病気です。

毛巣瘻は毛髪洞やジープ病といった別名を持っています。
ジープを運転する米軍兵士が多くこの病気を発症していることがジープ病の由来です。

毛巣瘻が腫れて化膿すると膿を出すため、痔瘻と間違われることがあります。
いずれにせよ治療が必要なので、肛門部に膿が生じた際は早めに医者のもとへ向かいましょう。

大腸ポリープ

ポリープは喉や鼻にできるものというイメージが強いですが、実は全身どこの粘膜にも発生し得ます。
大腸にもポリープはでき、出血を伴うことからそれを痔と間違えてしまうケースは少なくありません。

一口に大腸ポリープと言えど、その種類はさまざまあります。
まず腫瘍性ポリープと非腫瘍性ポリープに二分され、さらに腫瘍性ポリープは腺腫とがんの2種類、非腫瘍性ポリープは過形成性ポリープ・過誤腫性ポリープ・炎症ポリープの3種類に分別されます。
これらのうちよく発生するのは、腺腫と過形成性ポリープです。

ポリープが見つかった場合は原則的に切除しますが、その際に開腹手術を行うことは少なく、多くは内視鏡を使った軽度の手術です。
初期に発見されたほうが手術も容易になるので、定期的に検診を受けましょう。

大腸がん

大腸がんの多くが腫瘍性ポリープから発展したものです。
ほかのがんよりも進行が遅く、また症状も大人しい、さらにほかの場所に転移したとしても切除が可能である治りやすいがんであるため、見つかったとしても冷静に対処しましょう。

肺がんや胃がんと並び、大腸がんは日本人が患いやすい病気として知られています。
とくに近年増加傾向にあり、これは日本人の食生活が欧米化しつつあることが原因の1つだと言われています。
実際に高脂肪分を日本人より多く摂っている欧米人は大腸がんの割合が大きいです。

大腸がんは血便や便が細くなるなど、痔にも見られる症状がもとになり発見されることが多いです。
しかしそれらの自覚症状は大腸がんが進行してから表れるものであるため、何も症状がない時期から定期的に検診を受けておくことをオススメします。

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