いぼ痔(痔核)の方、又は疑いのある方へ

投稿日:2020年8月23日 更新日:

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いぼ痔(痔核)ってどんなもの?

いぼ痔(痔核)とは

痔は痔核・痔瘻・裂肛の3種類がありますが、その中で痔核が最も患う確率が高く、男女ともに患者全体の50%以上を占めています。
痔核はいぼ痔とも呼ばれ、その名のとおり肛門がいぼ状に腫れるのが特徴です。

いぼ痔(痔核)の原因

痔核は肛門に強い負荷がかかり、うっ血して発生します。
負荷の原因として、排便時の強いいきみや長時間の座りっぱなしなどが多いです。
また女性の場合は、妊娠して子宮が大きくなり、それが肛門を圧迫して痔核となってしまうケースもあります。

いぼ痔(痔核)の症状

痔核は発生する場所によって内痔核と外痔核に分類されます。
歯状線より奥、粘膜にできた内痔核は痛みこそ感じないものの、排便時に出血してしまいます。
また悪化すると肛門から飛び出てしまい、指で押さないと戻らなくなります。
一方で外痔核は、歯状線より外側にでき、出血は少ないですが痛みは非常に強いです。

いぼ痔(痔核)の分類

内痔核は程度別にⅠ度からⅣ度までの4段階に分類されます。なおこの4段階とは別に、特別痛みが強いものとして血栓性外痔核と嵌頓痔核もあります。

内痔核Ⅰ度

Ⅰ度の内痔核はいぼが脱出しておらず、出血ではじめて気づくケースが多いです。
内痔核の粘膜に、便が当たることで、粘膜が裂けて出血します。

内痔核Ⅱ度:指で押し込めば戻ります。

Ⅰ度内痔核は排便時に脱出するものの自然に戻ります。

排便時に力むことでイボ(痔核)が顔を出します。

内痔核Ⅲ度:自動で戻らず、手で入れこまないとダメ

手で入れ込まないとイボが戻らないぐらい大きな痔核です。半分が顔を出していて、痛みやうっ血し、出血することもあります。

内痔核Ⅳ度:常時イボが顔を出しています(脱肛)

常時飛び出しており、また粘液で下着を汚してしまうほど悪化した状態だとⅣ度に認定されます。

いぼ痔の応急処置(排便時)

①手をアルコール消毒します。

②肛門を綺麗にした後で、利き手でイボを肛門内に押し込みます。

③押さえながら立ち上がってください。
※立ち上げる際は下着を膝上に上げておくと立ち上がりと同時に下着も履きやすくなります。

Ⅰ度の内痔核は脱出しておらず、出血ではじめて気づくケースが多いです。
内痔核は排便時に脱出するものの自然に戻るならⅡ度、指で押し込めば戻るのがⅢ度です。
常時飛び出しており、また粘液で下着を汚してしまうほど悪化した状態だとⅣ度に認定されます。

血栓性外痔核は肛門の周辺に血の塊、血栓ができているもので、皮膚が破れて出血することもあります。
血栓性外痔核は肛門の内側や縁にできますが、それが外側まで脱出し、また血栓の数も多くなったものが嵌頓痔核です。

いぼ痔(痔核)の治療について

一般にいぼ痔と呼ばれる痔核は3種類ある痔の中でも最も罹患率が高く、男女それぞれの患者でも50%以上です

痔核の治療では進行度や種類によって保存療法・外来措置・手術療法のどれかが行われます。
多くの場合は保存療法や外来措置で治るため、手術にまで至る患者は全体の1割から2割ほどです。

保存療法

痔核はいきなり手術したり注射を施したりするのではなく、まずは食生活や排便習慣などを見直すことから治療が始まります。
これは便秘や下痢、または力仕事や座りっぱなしの姿勢などにより肛門へ長時間かかった圧力などが痔核の主な原因だからです。
こういった生活習慣を改善しない限り、たとえ手術を行ったとしても再発のリスクを負い続けます。
アルコールや香辛料を控え、代わりに食物繊維をしっかりと摂り、また排便時は強くいきまないよう心がけましょう。
体の冷えは血行を悪化させ下痢の原因にもなるので、毎日入浴して温めることも効果的です。

なお痛みが強かったり炎症を起こしていたりする場合は、補助的に薬物を使用することもあります。
座薬や軟膏、または錠剤などが処方されるので、医者の指導のもと適切に使用しましょう。

注射療法/PAO注

痔核はそれが発生する位置で内痔核と外痔核に分けられます。
内痔核は歯状線よりも体内側に発生した痔核で、痛みは感じないものの、出血を起こします。
頻繁に出血を繰り返している内痔核に対してはPAOの注射が有効です。
PAOとはフェノールアーモンドオイル(Phenol Almond Oil)を意味し、これを注射すると内痔核の血管周辺が炎症を起こします。
それにより静脈が圧迫され血の巡りが悪くなり、痔核が硬化して出血しなくなるという仕組みです。
PAOは即効性が高く、またこれを施された痔核は小さくなります。
また内痔核なので注射の痛みも感じないことがメリットとして挙げられます。
しかしPAOを注射できる痔核には限りがあり、あまりにも進行しているものには使えません。
また効果も永続的ではなく、半年から1年ほどしかもちません。
そのためPAO注で治療を終わらせるのではなく、これを施して出血が止まっている間に保存療法を行うことが求められます。

PAO注は比較的古くから行われている手術法であり、日本でも70年代から今日まで使われています。
また後述のALTA注が開発されるまでは、痔核に有効な唯一の注射療法でした。

注射療法/ALTA注

PAO注が何十年と歴史があるのに対し、ALTA法は2000年代になってはじめて行われるようになった新しい療法です。
PAO注はフェノールアーモンドオイルを5%に希釈して使用していたのに対し、ALTA法では硫酸アルミニウムカリウム・タンニン酸水溶液(Aluminum Potassium Sulfate・Tannic Acid) を 2%に希釈して使っています。

内痔核を硬化させる点は同じですが、ALTA法の場合はその効果が半永久的です。
またALTA法での硬化は金組織を巻き込むようにように起こるため、痔核の脱出にも効果的です。
手術よりも手軽でPAO法と違い、効果が持続し術後の痛みも少ない、さらに保健が認められます。
自己負担額は1回につき5,000円から15,000円程度に収まることから、ALTA法は瞬く間に普及していきました。

しかしながら強力な薬品を注入するため、痛みや発熱、また肛門狭窄や肛門周囲膿瘍などの後遺症をきたすリスクがあります。
これを少しでも回避するために、痔核を4箇所に分けつつ、それぞれへ少しずつ注射していきます。
1回の注射で済むPAO法と比べると回数こそ多いですが、内痔核なので痛みは心配ありません。
なお、妊婦や授乳婦、透析患者や放射能治療歴がある方には施せないので、そういった方の場合は別の手術法を選ぶ必要があります。

外来措置・手術療法

保存療法を試したが改善されなかった場合、外来措置や手術療法が行われます。
痔や患者の状態によっては特定の手術法が選べないこともあるので、手術前にしっかりと医者と相談しましょう。

いぼ痔で手術が必要な場合とは?

痔核とは肛門がいぼ状に腫れる痔のことであり、便秘や排便時の強いいきみ、または妊娠して大きくなった子宮による圧迫で肛門がうっ血することで発症します。

排便時に出血し、発生した場所によっては痛みもあります。痔核・裂肛・痔瘻と3種類ある痔の中でも最も発症率が高く、男女ともに全患者の50%以上が痔核です。

痔核が軽度の場合は、便通を整え生活習慣を正し、座薬や軟膏などを使うのみで対処可能です。
しかし進行しており、出血量が多くて貧血も起こしている・咳をしただけでも脱肛するため日常生活に支障をきたしている・指で押しても痔核がもとに戻らないなどの場合は手術が検討されます。

肛門というデリケートな場所の手術であるため、恥ずかしさや恐怖心を抱いてしまう方は少なくありません。しかし当然ながら、手術しないと痔核は治りません。
とくに脱出した内痔核を指で戻している方の場合、痔核が急に大きくなって戻せなくなり、さらに激痛が走ってしまうこともあります。
こういったリスクを避けるためにも、痔核を患ったら早めに医者へ相談しましょう。

手術の内容により、腰痛麻酔や仙骨麻酔など使用する麻酔の種類が変わりますが、どれもしっかりと麻酔効果があるものなので痛みを心配する必要はありません。
また必要な時間も15分から30分ほどであり、患者によっては手術が始まったことに気づかないほどです。

腰痛麻酔を使用した場合、頭痛や術後数日間の尿閉が起こることがあります。
かつては肛門のしまりが悪くなったり、逆に肛門がすぼまってしまったりといった後遺症が起こることもありました。
しかし現在は大きく改善され、昔のような後遺症も減りましたのでご安心ください。

どのように手術するか?

痔の手術ではまず血液や尿の検査、麻酔に必要な心電図の測定などの検査を行います。
どの検査に関しても大掛かりではないので心配ありません。

痔の手術は腸に便が残っている状態では行えません。
当日に排便を済ませられていれば大丈夫ですが、もし便を出せなかった場合は軽い浣腸を施すこともあります。
なお手術直前に食事は摂れません。

結紮切除術

結紮切除術はその名のとおり痔核にメスを入れて切除する手術法です。

結紮切除術は内痔核・外痔核・内外痔核どの種類の痔にも使え、また進行度にもよらず、さらに痔瘻や裂肛を併発している場合でも問題ないため、痔核の手術に際して最も多く採用されています。

結紮切除術は痔核にメスを入れつつ、痔核根本の血管を糸で縛ることが特徴です。

現在、結紮切除術では痔核を摘出した後の傷口を完全に閉じず、少しだけ開けておく「半閉鎖手術」が行われることがあります。
完全に防がないことにより肛門が狭まってしまうことを防ぎ、さらに術後の出血も減らせるようになりました。

ちなみに結紮切除術が一般化する前は肛門の粘膜部をすべて切り取り、さらに残った直腸と皮膚を縫い付ける手術が行われており、これが術後の痛みにつながっていました。またALTA注と結紮切除術の併用療法も多く行われています。
併用療法は内外痔核と呼ばれる、内痔核の中に肛門周辺の静脈が含まれている種類の痔核、つまり内痔核と外痔核の領域にまたがって発生した痔核に対して有効です。
まずALTAが効かない外痔核部分に結紮切除術を施し、その後に内痔核部分へALTAを注射します。
結紮切除術とALTA注の特長をどちらも適応でき、さらにALTAの使用量が減るため、合併症のリスクも抑えられることがメリットです。

結紮切除術では必要最低限の箇所だけを切除し、それ以外の粘膜は残されるため、昔のような痛みも基本的にありません。

手術後はどう経過していきますか?

術後はまず、麻酔が抜けるまで安静にしています。
日帰り手術の場合は麻酔が切れた後に帰宅でき、その後の食事も可能です。
なお、日帰り手術は非常に難易度が高いため、実施できる医療機関は限られています。

痔の手術では肛門とその外側傷口を残しますが、これは便や細菌が傷の中に溜まらないようにするためです。
ドレナージと呼ばれる傷口のトンネルがあることで肛門内部の分泌液が外へ排出され、傷口を清潔に保ちます。
最後までドレナージが効果を発揮するよう、肛門内部の傷が先に癒えることが理想です。
もし外側が先に塞がってしまうと分泌液が排出されなくなり、治りも遅くなります。
そういったトラブルも発生しなかった場合、傷は術後1ヶ月程度で治ります。
しかし肛門のつっぱりをはじめとした違和感も消えるにはさらに数ヶ月が必要です。

日帰り手術の場合、傷や排便の状況を確かめるべく手術の翌日や翌々日は通院しなくてはなりません。
とくに問題がないようなら通院間隔を空け、徐々にペースを落としていきます。
入院手術の場合は退院までに10日ほど必要です。
日帰り手術と同じように傷の確認を行った後は、医者の監督のもと排便や座浴などを行います。

排便はどうなりますか?

術後は1週間ほど排便時に痛みが生じ、とくに3日や4日後が最も痛くなります。
通常の場合、手術から2日後に最初の排便がありますが、肛門が十分開くよう脚を広げ、さらに両手でお尻を引っ張り上げる姿勢を取れば痛みを軽減させることが可能です。
痛みを恐れて便を我慢すると便秘になり、痛みがより強くなるので、多少の痛みは我慢しましょう。
なお排便が楽にできるように弱めの下剤が処方されることもあります。

排便後はしっかりと肛門を洗い、その後乾燥させましょう。
この際、可能な限り紙で拭くことは避けてください。
とくに強くこすって拭いた場合、傷口が開いてしまうこともあります。
そういったことを防ぐためにも、なるべく温水洗浄機能を使ったり座浴を行ったりして肛門をきれいにしましょう。
座浴では便器の上に洗面器を置き、その中にぬるま湯を入れて浸かります。
なお便器に後付けする座浴装置も販売されているので、それを使うのも良いでしょう。
座浴装置の中にはジェットバスのようにバブルを発生させてくれるものもあります。

痔を手術した後は血が出ることもありますが、これは裂肛や痔核の症状とは異なり解放している傷口からのものなので心配ありません。

日常生活はどうなります?

食事に関する特別な制限は設けられませんが、手術当日や翌日はおかゆのように消化が良く、脂肪や繊維質が少ないものを選びましょう。
2日目以降は通常の食事で構いません。
しっかりと食事を摂り、正常な排便習慣を付けたほうが術後の治りも早くなります。
なおカレーや担々麺など、辛くて刺激が強いものはしばらく避けたほうが無難です。
アルコールに関しても、手術から2,3週間経過してから飲むようにしましょう。

体が清潔になり、さらに血液の循環も良くなるため、お風呂は推奨されています。
シャワーだけで済ませるのではなく、ぜひ湯船に浸かってください。
しかし極端な長風呂はかえって傷に良くないので注意しましょう。
また肛門を石鹸で直接洗ってもいけません。
お湯で洗う程度で抑えてください。

再発の心配はありますか?

手術によって痔核は取り除かれるため、そこから再発することはありません。
しかし痔の原因となったものが改善されなければ新たに患うリスクを負い続けます。
とくに痔核の主な原因である便秘は治していく必要があるでしょう。
トイレで強くいきむ習慣を続けていると、手術箇所とは別の場所に痔核が生じることがあります。
便秘の改善には何よりも生活習慣の見直しが重要です。
食事をしっかりと摂り、睡眠時間を十分に確保してください。

便には多くの細菌が含まれており、排出した後も肛門に残っていると傷口が化膿することがあります。
化膿は痔だけでなく、ほかのさまざまな病気につながるので、排便後はしっかりと洗いましょう。

またこの手術法が発表されたのは1930年代と古く、日本での導入も60年代から70年代とPAO注より先であるため、これまでに数多くの工夫や改良が重ねられてきたこともメリットとして挙げられます。
一方、手術自体は15分程度でありながらもその後に1週間から2週間の入院が求められるため、それを厭ってALTA注やゴム輪結紮療法を選ばれる方も少なくありません。

結紮切除術では腰椎麻酔という種類の麻酔を使用します。
これは腰に針を刺して脊髄液の中へ麻酔薬を注射するものであり、全身麻酔ではないため感覚がなくなるのは下半身のみです。
そのため手術中は医者と会話できます。

近年痔核を切除した後の傷口を完全には縫わず、少しだけ開けておく半閉鎖手術が多く行われています。
完全に閉じないことで肛門が狭まってしまうことを防ぎ、さらに術後の治りも早くなりました。
またALTA注と結紮切除術の併用療法も多く行われています。
併用療法は内外痔核と呼ばれる、内痔核の中に肛門周辺の静脈が含まれている種類の痔核、つまり内痔核と外痔核の領域にまたがって発生した痔核に対して有効です。
まずALTAが効かない外痔核部分に結紮切除術を施し、その後に内痔核部分へALTAを注射します。
結紮切除術とALTA注の特長をどちらも適応でき、さらにALTAの使用量が減るため、合併症のリスクも抑えられることがメリットです。

ゴム輪結紮療法

悪化して肛門から脱出するようになった痔核に対してはゴム輪結紮療法が有効です。

この手術法では特殊な器具を使いつつ、ゴムの輪を内痔核の根本にはめ込み、その締め付けによって痔核を壊死・脱落させます。
やわかくて器具で引っ張りやすく、また形の単純な痔核に対して良く効き、対して硬化していたりあまり大きくなかったりするものでは成功率が低いです。

施術後1週間から2週間前後には痔核が脱落します。
その間、経過観察のための通院は求められるものの、患者は日常生活を送れることがこの手術のメリットです。
しかし切除して取り除いたときと比べると、再発の可能性が高くなります。

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